救急車のストレッチャー、あなたの家に入りますか?
持ち家でも、賃貸でも。家族と暮らしている方にも、一人暮らしの方にも、読んでほしい話です。
「救急車を呼べば、あとは運んでもらえる」——多くの人がそう思っています。私も、身内のことがあるまではそう思っていました。でも実際には、呼べても、家から運び出せないことがあります。
この記事では、そうならないための寸法の目安・家じゅうのチェックリスト・もし入らなかった時の対処法までまとめました。ブックマークして、時間のある時に家族と読んでもらえたら嬉しいです。
そもそもストレッチャーって、どのくらいの大きさ?
ストレッチャーというのは、救急隊が使う「車輪のついたベッド型の担架」のこと。ドラマの救急シーンで、ガラガラと運ばれていく——あれです。まず、大きさのイメージを持っておきましょう。
幅は一般的な玄関ドアと、ほぼ同じ。長さはヨガマット1枚より、ちょっと長いくらいです。
数字だけ見ると「うちも通れそう」と思いますよね。でも、通り道には落とし穴がいくつかあります。
「入るはず」が入らない、3つの落とし穴
① 開き戸のドアそのもの
日本の玄関には横開き(引き戸)と縦開き(開き戸)があります。開き戸の場合、ドアを開けた状態で通ることになる。その開いたドア自体が、通り道をふさいでしまうことがあります。
② いちばん狭い場所の幅
廊下は、全体が広くても一番狭いところで決まります。途中に置いた棚、洗濯物カゴ、飛び出した荷物。そこが関所になります。
③ 曲がり角
幅は足りていても、長さ約2mのものが廊下の角を曲がれるかは、また別の話。まっすぐ入る家より、角のある家の方が要注意です。
【保存版】わが家の“運べる家”チェックリスト
一度に全部やらなくて大丈夫。気づいたところから、メジャーを片手に見てみてください。
玄関まわり
- ドアを全開にした時、開いたドア自体が通り道をふさいでいないか
- 玄関の外〜中の段差(担架はなるべく水平に保ちたい)
- 靴箱・傘立て・置き靴が、通り道にはみ出していないか
廊下
- いちばん狭いところの幅を測る(60〜70cmが目安)
- 途中に置いた棚・荷物・洗濯カゴが出っぱっていないか
曲がり角
- 廊下が直角に曲がる場所で、長さ2mのものを回せそうか
- 角に家具や段ボールを置いていないか
寝ている場所まで
- ベッドや布団のそばまで、担架を寄せるスペースがあるか
- 床にコード・ラグ・つまずくものがないか
マンション・アパートの方
- 玄関を出た共用廊下・エレベーターに担架が入るか(対応サイズか)
- エレベーターがなければ階段。踊り場で曲がれるか
もし「入らない」と分かったら
入らないと分かっても、慌てないでください。「運べない」わけではありません。今のうちにできることが、ちゃんとあります。
今のうちに、動かせる物を減らしておく
構造は変えられなくても、「いざという時にサッとどけられる物」を通り道から減らしておくだけで、ずいぶん違います。片付けは、こういう時のための備えでもあるんです。
救急隊は、別の運び方も持っている
ストレッチャーが入らない時は、布状の簡易担架で玄関まで運び、そこで乗せ替える方法があります。ただし、その分だけ時間はかかります。
通報の時に、先に伝えておく
119番で「廊下が狭い」「エレベーターがない」「〇階まで階段」と先に伝えておくと、隊員が道具や人数を準備して来てくれます。これは今日から覚えておける一手です。
私が、これに気づいた日
私は老人ホームで、約10年間働いてきました。救急車に同乗した回数は、たぶん職場でいちばん多かったと思います。ストレッチャーが部屋に入ってくるのは日常の風景で、廊下の物をサッとどけるのも体が勝手に動くくらいでした。
そんな“搬送慣れ”した私が、初めてハッとしたのは、叔母(叔父の妻)が救急搬送された時。叔父の家は廊下が狭く、ストレッチャーはギリギリ入れませんでした。救急隊は簡易担架で叔母を玄関まで運び、そこでやっと乗せ替えた——その光景を見て、思ったんです。
10年も現場にいた私ですら、自分の身内の家で初めて気づいた。「まさかうちが」と思っている方、きっと多いと思います。
まず今日の、ひとつだけ
全部やらなくていいんです。まず今日、廊下のいちばん狭いところの幅を、メジャーで測ってみてください。それだけで、十分な一歩です。
救急車は呼べても、運び出せなければ間に合わない。慌てないための備えは、こういう静かな時にしかできません。